タイトル  : 広丘竪石の家
建物種類  : 住宅
所在地  : 長野県塩尻市広丘
仕様  : 木造2階建て
建築規模  : 197.82㎡
施工会社 (株)滝澤工務店
竣工 2013年4月
 

 

 

依頼主のご自宅を初めて訪れた時、まるで森の中の洋館のような印象をその建物から受けた。それは、広い敷地が屋敷林に囲まれていて、建物が洋館に似せて造られていたからでした。このときの印象から、森と調和した家にすることを計画を進める際の必須条件にした。

はじめに、庭の中ほどにあるナナカマドの大木と古井戸を活かしたいということと、離れのような部屋が欲しいという依頼主からの要望を考慮し、ナナカマドと古井戸の場所へ玄関をつくり、その玄関を挟んで東側に離れのような予備室を、西側に普段の生活の場である母屋を配置した。

次に、庭や屋敷林に解放された居間と食堂が欲しいという要望に対して、それらの部屋を母屋の1階に配置し、その南側に大きな開口部を設けた。そして、生活の中に自然に本があるようにして欲しいという要望に対して、吹き抜けのある居間の壁一面に本棚を作りそこに階段を設置した。入居後この場所では、子供たちが階段に腰をかけ思い思いの本を読んでいる姿がみられるそうだ。

キッチンについては、庭の近くに台所と食堂を持ってきたい奥様と、居間を庭の近くに持ってきたいご主人とで意見の食い違いがみられた。そこで、居間を庭の近くに配置し、その居間に向かって斜めにキッチンを設置することで両者の意見を融合させようと考えた。この斜めに設置されたキッチンは空間を広く見せるとともに、居間とキッチン、食堂とのつながりを深くするという予想以上の効果が生まれた。

また、居間の南側壁面には2階の天井まである吹き抜け一面に大きな開口部を設けた。信州の厳しい冬に対しては、この大きな開口部から暖かな日差しを室内に取り込むとともに、奥様の夢であったという薪ストーブを併用することで、快適な熱環境を作り出すことができた

依頼主からの要望を可能な限り考慮しながらも、空間の構成を明確にしたり、熱環境まで丁寧にデザインしたりすることで、シンプルながらも飽きのこない家を生み出すことができたように思う。

arai

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